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【地域共助の原点】東日本大震災後の危機感から生まれた「お達者倶楽部」の挑戦と成果     No18


本記事は、地域健康講座 お達者倶楽部 の活動記録です。

<東日本大震災後の危機感から生まれた「お達者倶楽部」の挑戦>

2011年の東日本大震災以降、地域社会における「隣助」や「共助」の重要性が強く叫ばれるようになりました。ところが、その最小単位である自治会の存続危機が、私の地域で現実のものとなりつつありました。自治会の役員が見つからず、総会で「自治会を解散しなければならない」という言葉が出たとき、私は非常な危機感を覚えました。

私ができることを模索する中で、HSP(東京大学医療政策推進人材養成講座『医療を動かす』)を終了した友人たちの多くは国の中枢や各団体の中心的役割を担っています。しかし、私は中央での活躍を望むよりも、「地元・最小集団の地域」から状況を動かすことこそが重要だと確信するに至りました。

私の考える解決策は、「健康」を軸とした住民同士のface to faceのつながりづくりです。住民主体の地域健康講座です。住民一人ひとりが健康について理解し、自ら行動できるようになること。そしてその知識をもって隣人をサポートできる関係性を築くこと。これが、地域共助の強固な基盤になると考えました。


<立ち上げの工夫:オープンなコミュニティを目指して>

そこで2015年、私は民生委員としての立場も活かし、市の政策との協働を視野に入れ社会福祉協議へ相談。市の協働事業として補助金を得るための申請書を作成しました。協力者には同期の民生委員や看護師の友人に声をかけました。

重要な決断として、あえて自治会との共催は避けました。これは、自治会に加入していない住民の参加を妨げないようにするためです。私たちは、地区住民全体を対象とした、誰もが参加しやすいオープンな健康コミュニティを目指しました。


<地域のつながりを生む健康ミニカフェ「お達者倶楽部」>

モットーと活動の柱

モットー: 健康で衰えを跳ね飛ばし、お互いにお達者で助け合い

活動の柱

目的(趣旨)

目標(期待される住民像)

健康の維持・増進

いつまでも元気で自立した生活を送れる心身の健康づくり。

健康について積極的な自己管理ができる住民になる。

相互扶助の関係構築

もしもの時、お互いに支え、助け合える関係づくり。

「お達者サポーター」を育成する。

地域の居場所づくり

住民が集い、学び合える地域コミュニティの創出。

健康・介護などの問題の相談や支援を自主的に行うことができる住民になる。

対象: 地区住民全体

開催頻度: 月1回/基本第4土曜日 9:30〜12:00


カフェの具体的な内容(健康・交流・育成)

参加者が主体的に健康を学べるよう、内容を複合的に設計しました。

  1. 受付時の健康チェック・相談(15分):ボランティアの看護師が担当。

    看護師が血圧計と聴診器で参加者の健康チェックを行う地域健康講座の受付風景(お達者倶楽部)
  2. 専門家による健康講座(45分):住民の医師、地域包括支援センター職員などが協力。

    • 生活習慣病、がん、心筋梗塞、認知症などの病気について

    • 老年における心身の変化(嚥下、転倒予防など)

    • 制度について(健康保険制度、介護保険制度、各種サービス)

      講師の説明を聞き、資料を見ながら学ぶ参加者の講座風景(地域包括ケアの学び)
  3. 予防実践(20分):転倒・認知症予防体操などの実技。

    椅子に座って円になり、軽い体操で体をほぐす参加者たち(地域の健康ミニカフェ)
  4. 交流(60分):飲み物、茶菓子を提供しながらの茶話会。ちょこっと生活の知恵や趣味のご披露(中高生の参加も歓迎)。

         

    テーブルを囲んでお茶を飲みながら談笑する参加者たち—顔の見える関係づくりの場
  5. サポーター育成:2年間で一定要件を満たした参加者に**「お達者サポーター」**認定証を授与。


活動実績(平成30年度の例)

項目

詳細

総参加者数

274名/全12回(1回平均約23名、最多51名

最多参加回

感染予防の体験学習(51名)

高関心テーマ

介護・医療保険制度(25名)、骨折予防(25名)



<地域に根付いた効果と教訓>

参加者間の「つながり」の深化

この住民主体の地域健康講座「お達者倶楽部」の活動を継続する中で、当初の目的であった「住民同士のface to faceの基盤」は着実に構築されました。

  • 相互の見守り: 参加者同士のつながりができ、欠席者がいると様子を見に行ってくれるように。

  • 参加の促進: 開催当日の朝、高齢の参加者に声かけをして一緒に来場してくれるように。

  • 共助の広がり: 共催ではなかった自治会役員の方が、準備・片づけを手伝ってくれるように。


参加者からは、「続けてほしい」「話を聞いているだけで少し元気になります」「医学的なことが聞けて良かった」といった、活動への手応えを感じる声が多く寄せられました。


<活動成果の発信:地域包括ケアシステムでの市民の役割>

活動2周年を記念し、地域での成功体験を広げるため、市の文化会館で**『地域包括ケアシステムでの市民の役割』**と題したシンポジウムを企画・開催しました。

目的: 団体の目的である「健康・福祉に関して自立した行動ができる」を市全体に共有すること。

来場者アンケート(抜粋):

  • 事前関心:「地域包括ケアに興味があった」31件/「もっと知りたい」30件

  • 当日の効果:「理解が深まった」41件/「今後、積極的に活動したい」31件

大切なつながりと結びのメッセージ

「お達者倶楽部」は、1クール2年を2回の計4年間実施し、私の都合と後継者不在により終了となりました。


【重要:読む際の注意点】この後のセクションには、大切な方を亡くした経験、および「悲しい形での死」に関する記述が含まれます。心身にご負担を感じる方は、無理をせず読み飛ばすか、閲覧をお控えください。


この経験を語るのは、人とのつながりが、いかに私たちの生活、そして命にとって不可欠な「命綱」であるかを、深く実感した出来事があったからです。

100歳近いご高齢でも、長く本会(お達者倶楽部)に参加くださった方がいました。ご高齢でありながらも、日々の「つながり」の中でお元気に過ごされていました。ところが、活動の終了と、コロナ禍での接点の減少が重なった影響か、私の転居後まもなく、孤独の末に悲しい形で命を終えられたとの知らせを受けました。胸が締め付けられる思いでした。

この出来事を通じて、私たちが守り続けてきた人と人とのつながりが、何物にも代えがたい「命綱」であったことを改めて痛感しました。高齢であるが故に「生きていたくない」という思いは常に存在し、それを思いとどまらせる力が、他者との関係性の中に確かにあったのだと感じます。

困ったときは、お一人で抱え込まず、必ずお住まいの**「地域包括支援センター」等の公的窓口にご相談ください。緊急時は119番**へ。


これらの経験を教訓とし、今、私が行っている事業をより一層丁寧に、地域のつながりを大切に進めていきたいと思います。


関連:民生委員と地域包括支援センターの連携(No17)/次号で子ども向け「英語で遊ぼう」(No20)


 
 
 

1件のコメント

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匿名
5日前

本当に今、地域のつながりが希薄になり地域の諸々の委員のなりて不足、関心のなさを感じます。

そんな中、お手伝いはできても自ら会を立ち上げ運営するのは、とても勇気がいることだと思います。

また、周りに頼るだけでなく、一人一人が、繋がりを持ち助け合える社会ができるといいですね。

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