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「組織の土壌を耕す」という言葉が生まれるまで──HSPの学びと現場の経験から見えた軌跡 No53

こんにちは、harmonia planetの尾高貴美子です。

先週の日曜日、私が2008年に修了したHSP(東京大学医療政策人材養成講座:ブログNo46で紹介)同窓会の総会があり、最近の活動についてZOOMで発表させていただく機会を得ました。

私がなぜ、この大切な場所で再びマイクを握ったのか。 それは、激動の現場で模索を続けた果てに、人生最後の仕事として立ち上げた現在の事業活動が、まさにこのHSPでの学びから出発しているからです。


🏛️ 「実際に一人称で行動し、医療を動かすリーダー」を求めて

2004年に文部科学省の支援で立ち上がったHSPは、「従来の官僚主導・閉鎖的な意思決定を打破し、異なる利害関係者がエビデンスベースで議論できる『次世代型の医療政策リーダー』を育成すること」を理念としています。

それまでの医療政策が、行政・医師会・与党政治家という限られた人々だけで意思決定されていた背景への挑戦でした。


そのため講座では、

  1. 医療提供者(医師を中心とする現場)

  2. 政策立案者(厚労省・文科省・医系技官・地方自治体)

  3. 患者支援者(患者会の代表など)

  4. 医療ジャーナリスト(メディア関係者)

という「4つのステークホルダー」から参加者を公募されました。


そして、最前線で政策研究をされている講師陣から講義を受け、自らのテーマに沿って半年間の研修と成果発表を行います。


修了生たちは、両院の国会議員、厚労省の実務者と共にがん患者の就労支援を行う活動、医療事故防止の最前線に立つリーダーなど、全国の医療制度改革や現場改善を力強く牽引しています。


そんな中、私は「患者支援者」の立場からこの講座に参加し、2008年に「医療基本法」をテーマに学びました。


しかし、修了後に待っていたのは大きな葛藤でした。

全国の舞台で華々しく活躍する仲間たちを前に、「現場の一(いち)看護師である私に、一体何ができるのだろうか」と、自らの足元を見つめて模索を続けていました。


🌱 地域に根を張り、関係性を耕した「お達者倶楽部」

その模索の先に生まれたのが、2015年から始めた地域活動でした。

高齢者の健康をサポートする「健康ミニカフェのお達者倶楽部」や、子ども向けの「英語で遊ぼう」です。


当時、東日本大震災の教訓から「地域の繋がりこそが災害時の命綱になる」と言われる一方で、私の居た地元の自治会は存続の危機に瀕していました。

「高齢者の健康を支えながら、近隣住民の密着度を高める仕組みを作らなければならない」。 そう強く感じ、私は使命感を持って動き出しました。

4年間の継続により、地域には確かな声かけや支え合いの関係性が生まれました。

この実践を通じて、私は「政策を現場に落とし込み、人と人を対話で繋ぐことの重要性」を確信したのです。

その後、個人的な事情で浜松へ転居することとなり、後任が見つからず閉会せざるを得なかったことは今でも悔やまれますが、この経験が現在の私の土台となっています。

「半世紀の実践から見えた:現場からの軌跡」と題されたスライド。1970年代から現在までの期間ごとに、看護師としての歩み、お達者倶楽部の主宰、浜松での起業といった役割と、そこから見えてきた「対話」や「関係性」の核心が表にまとめられている。
【HSP総会発表】半世紀の実践から見えた「現場からの軌跡」と、私の原点であるHSPでの学び。

💥 全国共通の課題:医療・福祉組織に横たわる「3つの深刻な隙間」

その後、浜松へ移住した私は、地域との接点を得るため、そして新たな挑戦として訪問看護ステーションなどの現場に身を投じました。そこで目にし、感じたことすべてが、今の私の活動につながっています


これは決して浜松だけの問題ではなく、全国の多くの事業所に共通する課題であることは、各種データからも明らかでした。

日本看護協会と介護労働安定センターでのデータをグラフとして示している。
①看護職員の離職要因の29.8%が人間関係
② 重大インシデントの約70%のが連携不足

③ 離職理由の63.6%が人間関係
離職やインシデントの背景には人間関係がある

経験者としての採用とはいえ、事業所の理念説明もなければ、まともな教育計画もない。右も左も分からず、誰に質問していいかも分からないまま現場に送り出される。管理者も実務に追われ、スタッフ間で情報交換をする機会すら皆無。


その結果、現場に横たわっていたのが「3つの深刻な隙間」でした。

  • 教育の隙間: 十分な情報共有がないまま現場へ向かう不安(個人スキル頼みの危うい教育体制)

  • 孤立する専門職: 対話が欠乏し、違和感や不安を一人で抱え込む構造(チームの機能不全)

  • 方向性の不一致: 組織のビジョンが浸透せず、小さなズレが修復不可能な「溝」に変わる瞬間

     「現場に横たわる3つの深刻な隙間」と題されたスライド。「教育の隙間(個人スキル頼み)」「孤立する専門職(チームの機能不全)」「方向性の不一致(修復不可能な溝)」という、医療・福祉現場が抱える3つの課題がアイコン付きの3つのボックスで解説されている。
    今、医療・福祉の現場に横たわる「教育」「孤立」「方向性の不一致」という3つの深刻な隙間。

    この連携不足と関係性の希薄さを目の当たりにした時、私のなかの「HSPスピリティ」が再び火を吹きました。「患者支援者」としての視点、そしてこれまでのキャリアで培ってきたすべてを懸けて、この現場の構造を救わなければならないと確信したのです。


    🚜 現場を耕す「ショベルカー」として、変革を設計する

    組織に必要なのは、場当たり的な処置ではありません。

    1. 組織視診(ヒアリングによる課題の可視化)

    2. 対話の設計(メディエーション技術による心理的安全性と事実の共有)

    3. 自走化支援(スタッフが納得感を持って働ける教育の仕組み化)


この3つのフェーズを回し、固まった組織の土壌に深く爪を立てて、新しい空気を吹き込むこと。それこそが、単なる研修講師ではない、現場を「実走」させる重機(ショベルカー)としての私の役割です。

「現場を耕す『ショベルカー』として」と題されたスライド。左側には「土壌を整え、空気を吹き込む」というメッセージと、メディエーションやACPを共通言語にする目標が書かれており、右側には緑色で描かれたショベルカーのイラストと「2025年〜 個人事業主として Harmonia planet」という文字が配置されている。
固まった組織の土壌を耕し、新しい空気を吹き込む。「ショベルカー」として、医療・福祉、そして中小企業の未来を創る覚悟。

現在、私はこれまでの看護師・管理者としての実践に甘んじることなく、日本医療メディエーション協会、Choosing Wisely Japan、日本アドバンス・ケア・プランニング研究会で常に最新の学びをアップデートし続けています。


「実際に一人称で行動し、現場から医療・福祉を動かしていく」。


この確固たる決意とビジネスモデルを同窓会で発表させていただき、ご参加の皆様からたくさんの共感と熱いエールをいただけたのではないか、と私自身そのように感じています。


harmonia planetは、これからも組織の土壌を耕し、医療・福祉の分野はもちろんのこと、広く中小企業における組織・人材の課題にも着手し、企業の未来を共に創り出すパートナーとして力強く活動し続けます。


その中心にあるのは、半世紀の実践で培った「関係性を整える力」です。

 
 
 

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