語り合おう、心を通わせる「メディエーションマインド」 ―JAHMシンポジウム初参加で深めた、関係性を紡ぎ直す対話の力― No76
先日、日本医療メディエーター協会(JAHM)が主催するシンポジウムに参加いたしました。
今年度のテーマは「語り合おう あなたにとっての メディエーションマインド」。
Zoomによるオンライン開催で、私にとっては初めてのシンポジウム参加となりました。
JAHMシンポジウム初参加とハルとの連携プレー
開始30分前にはデスクにスタンバイし、15分前にはチェックイン。
すでに何十名もの参加者が入室されており、画面には案内文とともに「心地よいBGM」が流れている……はずでした。
ところが、画面には音楽配信が出ているのに、音がまったく聞こえません。これまで何度もZoomを使ってきて特別な不具合などなかったのに、なぜ? 焦る気持ちを抑えながら画面のスクリーンショットを撮り、AIの「ハル(ChatGPT)」に助けを求めました。
指示された設定箇所を一つひとつ確認し、調整を繰り返すものの、開始5分前、2分前と時間だけが過ぎていきます。そしてついに開始時刻。それでも音は出ません。諦めかけた開会2分後、ふっとスピーカーから音楽が流れ出し、胸をなで下ろして会に合流することができました。冷や汗をかいた幕開けでした。
メディエーションマインドが目指す関係性の再構築
開会にあたり、JAHM代表理事の和田仁孝先生(早稲田大学法学学術院教授)よりご挨拶がありました。その中で特に心に残ったのが、欧米と日本におけるメディエーションの思想の違いです。

米英のメディエーションは『紛争解決(決着)』が主眼に置かれることが多いのに対し、日本のメディエーションは、解決の先にある『関係性の再構築』を目指している。ナラティブ(語り)の技法を用い、非審判的態度と中立性を保ちながら、言葉の奥にある感情を聴き取り、本人の主体性と気づきを重んじる。という趣旨のお話でした。
この「紛争」という言葉を聴いたとき、私の脳裏には世界のあちこちで続く「戦争」や「分断」の姿が重なりました。
白黒をつけて勝ち負けを決めることではなく、痛みを抱えた双方がどうやって未来の関係性を結び直すのか! その問いの重みを改めて噛み締めました。
「共有したつもり」はなぜ届かないのか
今回のシンポジウムは、一方的に有識者の講義を聴く形ではなく、参加者同士のグループワーク(GW)を中心に、日々の臨床や生活の中から気づきを深めていくスタイルでした。
第1ラウンドのテーマは「共有したつもりだった。でも、相手に届かなかった」「何をもって『届いた』と言えるのか?」という問いです。(※奇しくも、私が普段の研修講座やブログNo54でも大切にしてきたテーマそのものでした)
8名のブレイクアウトルームでは、様々な現場の課題が語られました。
詳細については、お知らせできませんが、とても示唆に富む学びでした。
私は「医療者が無意識に早口になってしまう言葉のスピード」について問題提起をしました。その時のテーブルホストを務めてくださった臨床心理士の方の、ゆったりと温かな語り口がとても印象的で、「言葉の内容だけでなく、声のトーンや間(ま)こそが安心を届けるのだ」と、グループの皆で深く頷き合いました。
共感が届いた瞬間と価値観へのまなざし
第2ラウンドは「共感して相手に届いた経験」「大切な価値観を尊重できたと思えたこと」を語り合いました。
最初、少し沈黙が流れたため、私から父が死を覚悟した当時の関わり(ブログNo3)を少しお話しさせていただきました。それを皮切りに、メンバーそれぞれの深い対話が溢れ出しました。
1ラウンド同様詳細を書くことは出来ません。
医療の現場には、どれほど尽くしても割り切れない悲しみや葛藤が常に存在します。だからこそ、表面的な解決を急がず、相手が握りしめている「本当の願い」に耳を傾け続けることが求められるのだと痛感しました。
医師の孤独とハーベスト(収穫)の時間
全体の共有の中では、医師を取り巻く過酷な環境についての意見も出されました。
時に「医療事故やトラブルの責任はすべて医師にある」かのように厳しく向けられがちな世間の視線。
しかし、過密な外来や激務の中で、医師自身もまた深い孤独やプレッシャーを抱えています。
そんな中、診察室を出ていくすべての患者さんに対して立ち上がり、「お大事になさってください」と深々と頭を下げる医師の実践や、「医師の背景や葛藤にも寄り添う視点が必要だ」という声に、深く共感いたしました。
最後に、アニータ・ブラウンが提唱する「ハーベスト(収穫:気づきの内省と洞察)」のワークが行われました。通常なら模造紙に付箋を貼っていくところ、今回はZoomのチャット欄に全員が思い思いの言葉を書き込んでいきます。
メディエーションマインドが育む対話の力
私は画面に向かって、二つの言葉を書き込みました。
「声なき声に耳を傾ける」「自分の正しさよりも、相手の背景を理解する」
本当は、私が立ち上げた『harmonia planet』の指針である「人に優しく、情報に厳しく」という言葉も投げかけたくなりました。けれど、JAHMという公の対話の場において、私自身の看板を掲げるのは少し野暮というもの。その言葉はそっと胸の内に大切にしまい、皆さんがチャットに紡ぎ出す豊かな言葉の収穫を、静かに心の中に受け止めました。
形だけの決着ではなく、心と心が重なり合う「関係性」をどう育むか。 午前中の救護訓練に続き、午後のシンポジウムでも、「システム」の奥にある「生身の人の心」に触れる、実り多き一日となりました。





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